於備前国義光彫同作之 平成二十三年八月吉日
槍 / 刃長:40.8cm 反り:なし 重ね:1.00cm けら首:1.90cm |
「蜻蛉切」写 |
体配
笹穂槍、平三角造、中心は生で孔一つ。鑢目は化粧に勝手下がり。表に護摩箸、裏は櫃に独鈷と素剣と梵字。
地肌
小板目肌良くつんで極めて精美。
刃文
焼き幅広く小沸よくつき、互の目が湾れて足よく入り、金筋、砂流し盛んにかかる。
鋩子
直ぐに焼き詰め。
備考
備考三河文珠派・藤原正真の作である「蜻蛉切」を模した槍です。三河は徳川家の家臣、戦国武将・本多忠勝が愛用したことで有名です。その天下三銘槍として名高い「蜻蛉切」を大野刀匠ならではの精美な地肌を鍛え、働き豊かな刃文を焼き上げています。
何よりそのフォルム、美しい姿に見とれます。緩やかなシンメトリーの弧を描き、フックラとした姿の中に凛とした印象が漂います。それは究極の機能美あるいは黄金比ともいうべき感覚から導きだされた絶妙なラインが見せる魔法かもしれません。そこへこの見事な彫です。表は精美な肌を彩る豊かな所作、裏には強いメッセージが刻まれた彫。まるで端麗な女性が強い信念を合わせ持ったかのような奥行きさえ感じられます。実際、本歌を凌ぐ魅力がこの作にはあります。強いて言えば、本歌の生まれ変わり・・・やはり大野刀匠の写は半端ないレベルだという事を思い知らされます。もはや写を超えてオリジナルであり、本歌へと評されるプロセスをまざまざと見せつけられているようです。失礼な話ですが、本槍は本歌よりずっと若くそして健全であることは確かです。
余談ですが、“蜻蛉切”写は当サイトの「私と大野義光」でコメントをいただいた愛刀家の方が、大野刀匠に依頼して生まれたものです。なので当槍はその影打ということになります。それにしても、大野刀匠の槍・・・珍しい一品かもしれません。