大野義光 大野丁子

 

於越後国中ノ口川辺義光作之 昭和六十一年二月吉日

太刀 / 刃長:81.0 cm 反り:2.8 cm 重ね:0.82 cm

体配

本造、庵棟、中心は生で孔一つ。鑢目は勝手下がり。表裏に棒樋を中心過半まで掻流し。

 

地肌

小板目よく詰み杢目風になり、移り出る。

 

刃文

約幅広く匂本位で匂口締まりごころに大丁字乱れ。飛び焼かかり深く柔らかな小足・葉が盛んに働く。

 

鋩子

丁子がそのまま乱れ込み、浅く返る。

 

備考

大野刀匠得意の大野丁子(重花丁字)に見えますが、激しい大丁子乱れと表現した方が正しいのかもしれません。もちろん、大野丁子の感性を残しつつも、何となく控えめな印象を受ける匂口です。この時期の大野刀匠、優しい匂口を追求していたそうで、その試みが形となって表現されたのが本刀なのです。確かに匂口は締まりごころといっても深く、葉や足に至ってはふんわりと広がり朧のような光沢となって刃先へと馴染んでいきます。その所作が広い焼幅に展開し精美な地肌に見事に冴え渡ります。その試みは銘にも刻されており、「中ノ口川辺」という地名が付された銘になっているのです。もしかして、川辺のせせらぎを刃文として描いたのかもしれません。例えるなら、鮮明な移は川面に湛えた深遠な済んだ水、そして匂口はそこから溢れ出し柔らかな光を受けた瀬のようです。刀匠にお会いする機会があれば、ぜひ確かめてみたい一振です。本作は鎌倉末期の豪壮な太刀姿ですが、この刃文が不思議に調和するのは大野刀匠の技量あっての作といえるでしょう。

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