越後国義光作 昭和六十一年八月吉日(為打銘)
短刀 / 刃長:28.6cm 反り:2.5cm 重ね:0.57cm |
体配
平造、三つ棟、中心は生で孔一つ。鑢目勝手下がり。表裏に棒樋を掻き流し。
地肌
小板目肌良くつんで無地風となり精美な肌となる。
刃文
焼幅広く五の目乱に逆丁子乱、刃縁が冴える。匂口ふっくらと大野丁子が見事に乱舞し刃先へ溶け込む。
鋩子
大野丁子がフクラの弧に沿って乱込み、やや深く返る。
備考
大野刀匠が山鳥毛を完成し、まさに作刀意欲旺盛な時期に作られた本刀。この頃の大野丁子は、何とも表現しがたい柔かさを備えています。偶然ではなく例外でもありません。本刀の様な匂口を最初から目指して、それを具現化することに執着していたそうです。
ふっくらとした匂口、激しく、そして華麗に刃先へ向って拡がる大野丁子の様は、華やかさに加えその軟らかさが特に印象的です。足も含め匂口全体のトーンが浮き出る、またはうっすらと馴染むのなら、よくある重花丁子なのですが、本刀の丁子は匂口はふっくらと浮き出て刃縁が冴え、そこから乱舞する逆丁子は刃先へ向って徐々に溶け込んでいきます。先の方はまるで陽炎のようです。わずか1尺弱の空間に展開する刃文の絵画・・・体配、バランス、躍動感、大野刀匠のセンスと巧さが光ります。為打として作られた本刀は、大野刀匠も力を入れた作でもあり、上出来の一振。一見、刃文だけをみればやさしい五の目の逆丁子、しかし光にかざし匂口が浮き出たその光景は、賑やかに揺れる大野丁子が重なり合います。