大野義光 大野丁子

 

義光精鍛作之 平成三年秋吉祥日

太刀 / 刃長:76.2 cm 反り:1.8 cm 重ね:0.70 cm
大野義光重花丁字の世界(林原美術館)所載品・No.1

体配

本造、庵棟、中心は生で孔一つ。鑢目勝手下がり。

 

地肌

小板目肌良くつんで杢目心になり移り立つ。

 

刃文

細直刃、匂口締まりごころに小沸がつき小乱れ交じる。

 

鋩子

小丸が尖りごころに浅く返る。

 

備考

大野義光重花丁字の世界(林原美術館)所載品・No.1。日本刀が反りのある完成された姿を見せ始めたのは平安後期。この太刀は切刃造りから鎬造りへと移行した最初期の状態を示した一振りです。まずはそのシンプルさに驚かされます。華やかな作がもてはやされる現代において、その対極にある作と言えます。何も飾りがない分、改めて直刃の良さを伝えるその作刀技術に感服します。移のある地肌の美しさに加え、信念を表したかのように凛と伸びる細身の太刀姿。そこに柔らかな直刃が描く様は、美しいという感情以外は湧いてきません。ある意味、これで刀剣を問える術に圧倒されます。構成する要素の一つでも悪ければ成し得ない、誤魔化しのきかない一振です。数多の太刀・刀の最小公約数の一つといえる本作・・・何もないは時に、全ての答えが行き着く原点なのかもしれません。

 

大野刀匠コメント

直刃は意識的に作られた最初の刃文であります。最も基本的な刃文で、古今すべての刀工が作っております。平安時代の細身で優しい優雅な姿によく似合います。刀身の反りに比べて茎の反りが深く、両手で握って使うには使いにくいため、片手で使用したものと思われます。戦国時代に出てくる片手で使い易い短い刀と共通点があるように思われます。(大野義光重花丁字の世界より抜粋)

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