大野義光 大野丁子

 

於備前国義光作 平成十六年夏

短刀 / 刃長:26.0 cm 反り:なし 重ね:0.80 cm
「桑山保昌」写 白鞘( 同人鞘書 )

体配

平造、真の棟、中心は生で孔一つ。鑢目は勝手下がり。

 

地肌

総柾目肌の流れ心、刃縁あたりから刃先にかけて少し太くなり少し弯心に流れる。

 

刃文

匂出来の中直刃調で、所々柾目に沿って小さく弯、二重刃、食違刃が交じり、長い金筋、砂流が働く。

 

鋩子

柾目に沿った匂口がそのまま流れ込み、焼詰め風となり、棟焼になる。

 

備考

本刀を最初に目にして出る言葉は、美しいの一言。総柾目肌に沿って表れている中直刃調の深い匂口と金筋・砂流風のタテに働く所作が見事に絡みあい、9寸に満たない鍛鉄の宇宙に美しい情景を作り出しています。まさに森羅に杜に息づく杉や檜の銘木に見られるよく締まった年輪のようです。棟寄りは細かい杢目が縦一列に揃ったかのように繊細な肌、切先の棟にある棟焼には、流れ込んだ柾目がしっかりと焼込まれているのが確認できます。見所はタテの所作・・・中原信夫氏による「刀剣ルネサンス/あさひ刀剣HP」でも、本刀を取り上げ、タテの所作について所見を述べておられますので参考にしてください。
それにしても備前伝の大野刀匠が大和伝の、それも名物・桑山保昌の写をやるとは驚きです。ちなみに柾目鍛の作刀は、本刀を含め3振だけだそうです。もう一振はやはり大和伝の大保昌写。残りの一振は残念ながら所在が確認できません。もし、お持ちの方がご覧になっていましたら、ぜひお話をお伺い出来たら幸いです。

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